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腹水による呼吸困難で(獣医師の推測による)、
2019年の1月13日、3〜4時ごろにお月さまへ帰りました
みかんの思い出ページとして作りました
また、自分の気持ちの整理する場所としても使います
今後数日〜数ヶ月程度かけて、内容を編集する予定です

お迎えした日のこと

当時、練馬駅近くにあった小さなうさぎ専門店で出会いました。

『そちらにおかけください』と案内された白くて丸いテーブルの上に、店員のおっちゃんに抱えられてその子はやってきました。
テーブルにちょこんと乗った瞬間、きっと初めてのことで怖かったんだろうなあ、ちー…ってほんの少しのおしっこをしたことを、慌てるおっちゃんを横目に、なんとも愛おしく感じたことを強く覚えています。

動物など飼った経験はなかったし、ましてや育てることなんて、自分のお世話ですら精一杯だった当時の自分にはもちろん不安もあった反面、 形のない希望のような、なにか湧き上がるものがありました。

その夜、自宅のベッドにそっとその子を乗せました。
きらきらくりくりと輝く両目を見つめて、壊さないように恐る恐る頭をなでで(ほのかな体温を指先で感じました)、
ばくばくと脈打つ心臓の鼓動をぐっと飲み込み、できるだけゆっくりと、そして脅かさないように、「みかん」と、そう初めて呼びました。
人間の方はちょっと気恥ずかしかったよ。
うさぎの方は『はあ?』って顔してた。

2012年12月の冬の夜のことでした。

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はじめての子育て

みかんは、やんちゃにやんちゃを上塗りして、元気とおてんばと好奇心とおバカと、世界中の"かわいい"を全部かき集めてうさぎ型に凝縮したような子でした
ベッドのふかふかが大好きで、まんまるなお目々をぱちくりして、全力で走って横にひねりながらジャンプをして、ぴよよよんっと揺れる小さな両耳は僕の心を捉えて離しませんでした。
「…あのちっこいしっぽは付いてる意味あるんだろうか?」
「あんだけ目がおっきいとドライアイにならんのか?」
なんて、いくつかの些細な疑問は解決したし、謎は謎のままで終わってしまった疑問もあるけど、うさぎの専門誌や書籍、ウェブ上の情報などはこまめにチェックするようにしました。
ケガをしないように、体調が悪くならないように、いつかは『パパー!』なんて呼んでくれたりとか…まあそれはありえない事はわかってるけど。

でも本当に、1時間でも2時間でも3時間でも、時間が許す限り延々とみかんが成長していく姿を見続けていました。
そしたら…目の前でありえないことが起きました。

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ありえないこと

その日もたくさんベッドの上で飛び跳ねて遊び(ホームアローンの『自由だー!自由だー!ヒャッホー!!』みたいな飛び跳ね方)、ご満悦の表情で目の前までとてとて…と歩いてやってきました。
そして今日もたくさん遊んだね、とひと撫でふた撫でしたその瞬間、ころんっと横に転がったのです。
思わず口がぽかーんと開いてしまい、一瞬呼吸を忘れてしまいました。
本当に心臓が爆発するような思いでした。
"かわいい"の化身が、撫でると目の前でころんって。
遊び疲れもあったでしょうが、しかしそれは紛れもなく、自分のなでなでで安心してくれたという事実でした。
やっとみかんと少しだけ心が通じたような、それは、動物を飼ったことのない当時26,7歳ぐらいの自分には未だかつて想像しうることがないほどのありえない事態だったのです。

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2012〜2018年

(編集予定)

入院

いつもより呼吸が荒いかもしれないと、わずかな異変に気づいたのは2019年1月10日でした。
そのまま続けて異変があり、いつもの盲腸糞が、素人目にはほぼ下痢のように見えました。
夜も遅かったため、かかりつけの動物病院には電話が通じず、緊急対応をしている動物病院に電話をすると 『話を聞いている限り、恐らくは大事ではない様子なので数日様子を見てもいいかもしれない』という返答でした。
1月11日、妻がかかりつけの動物病院へ連れていき、その場ですぐに入院が決まりました。
具体的な病名は明らかにしませんでしたが、(開腹をしていないので確定ではないが)子宮の炎症からくる腹水があると診断されました。

1月12日、夕方から動物病院へ面会へ向かい、ケージ内の木製のスノコには、明らかな血液が混じった尿が点々としており、痛々しく見えました。
すぐに手術の意向を伝え、1月14日の午前中に手術が行われることが決まりました。
面会の別れ際、手のひらで小さな身体と温度を感じながら、「はやく治して、一緒にお家帰ろうね」なんてひっそり呟くように声をかけたら、思わず涙が溢れました。

『うん』と言ったのか。
『いや、この三連休のうちにお月さんに帰るよ』と言ったのか。
『まだ行かないで』と言ったのか。

みかんが何と言ったのか僕にはわかりませんでしたが、それがみかんと交わした最後の言葉でした。

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1月14日

7時47分、たった2分間の通話でした。
いま思えばどんな会話を交わしたのかほとんど定かではないのですが、 ただひとつ、『今日の朝、みかんちゃん、呼吸困難で亡くなりました』というある種の自信を持った、揺るぎのない、底抜けの悲しい言葉を聞いた瞬間に、目と胃の奥がぎゅっと締め付けられるような感じがしました。

支度を急ぎ、あまり慣れないルートの電車に乗り、動物病院へ向かう大通りを歩きました。
看板が遠くに見えてくると、両足に重りを乗せられたような不思議な感覚に陥りました。

『ご遺体です』
見慣れたブルーのキャリーバッグが診察台の上に置かれていました。

キャリーバッグの中にみかんが入っているんだとわかるまで、一瞬の間。
脳内はほとんど空白で、何もかもの理解が追いついていなかったと思います。

一歩、二歩と診察台へ近づき、恐る恐るジッパーを開けました。

これっぽっちも涙は出ませんでした。
悲しみに暮れる自分をどこかで期待していたのか?
そうあれば恐らく、人間として、きっと楽だと思います。
困ったことに、僕は冷静でした。
実は涙のひとつや鼻水のひとつぐらいあるかなー?なんて思って、コンビニでポケットティッシュまで用意して行ったと言うのに。

軽く説明を受け、入院費のお会計を済ませ、タクシーへ乗りました。
ミラーでキャリーバッグを一瞥し、ドライバーが言いました。
『あ"ーー…それはー…ハムスターかなんかかい?』
『私はねぇ、沖縄の生まれなんだけどねー…家の近くにでっかい林があってねえー…』
話がつまらなく、ていうかそれどころじゃないし、本当に鬱陶しかった。
けど、そのつまらない話でなんだか気が紛れる気がして、本当に助かった、とも思えました。

そして、左手に1kgと少しの重みを感じながら、
マンションの扉を開けました。

お葬式

(編集予定)

おわりに

みーちゃんへ。

まず思い浮かんだから、まあどうでもいいっちゃいいんだけど、キャリーバッグのこと話すわ。
いつもみーちゃんが入っていたキャリーバッグ、ピンク色はなんか恥ずかしいかなあ…と思って、 女の子なのにブルーにしちゃってごめんね。
あと、たまに音楽うるさくてごめんね。
病気のことも気づくの遅くってごめん。
獣医さんは『たぶんあまり痛みは感じてないと思われる』とか言ってたけど、そんなことないよね。
最期はごはんひとくちぐらいは食べれたかな?
家のいつものカリカリじゃなくってごめんね、三番刈りじゃなくってごめんね。
ちっちゃい身体でいっぱい頑張ったね。
今日は百貨店でドライフルーツ買ってきたから(これお医者さんに怒られるな…)、
明日一緒に食べよ。
ね。
本当はバナナとかも入れてあげたいんだけど…とりあえず葬儀の人に電話して聞いてみる。
大葉もちゃんと入れとくよ。

もう後は多くは語らなくていいね。

あ、あくびしてる時の顔、最後まで写真撮らせてくれんかったね。一番好きだったんだけど。
それと、葉っぱもカリカリもトイレ砂もまだいっぱい余ってるんだけどなー。
トイレ砂はあれだけど、カリカリは明日ちょっとだけいれとこっか?
他に足りないものあったら電話してよ。

みかん。

ネザーランド・ドワーフの女の子。

6歳。

やんちゃにやんちゃを上塗りして
元気とおてんばと好奇心とおバカと
世界中の"かわいい"を全部かき集めてうさぎ型に凝縮したような子

僕の小さなかわいい娘。

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